
2026年10月3日撮影(北戸田株は去年2025年には発生していなかった場所まで拡大していることを確認)


2026年10月23日追記:北戸田株については種を確定していません。北戸田での生育範囲の変化の観察と、E. dentata / E. davidii の同定判断は別事項です。三郷株についても本記事では「E. davidii相当」という暫定評価であり、確定同定ではありません。
10月3日の段階で三郷株は除草。上の2枚は三郷株の除草後の状態です。以下の比較本文に添えた写真は北戸田株とその種子であり、三郷株の計測対象10粒を写したものではありません。
既存の記載・同定形質・和名使用・標本記録の比較
資料比較レポート 2026年10月1日作成 2026年10月5日改訂


現時点で支持される結論
国内で E. dentata 名で扱われてきた植物の一部に E. davidii が含まれる可能性は、再検討する根拠のある仮説である。本調査では国内標本を対象とする系統的な再同定は実施しておらず、該当する記録の件数・割合・分布は確定できない。「日本のデンタはダヴィディだった」と全国の記録を一括して読み替える根拠には達していない。

起点文書の三郷株の成熟種子は、寸法、外形と転動から推定した横断面形、種皮彫刻、および種阜を比較すると、E. dentata、E. davidii、E. subilsiae の3分類群のうち E. davidii の記載に最も整合する。種阜の寸法は測定軸の留保を伴う参考比較であり、同文書の「E. davidii 相当」「確定同定ではない」という位置づけを維持する。[1–3]


| 区分 | 整理できる内容 |
| 確認できること | 両種を分ける成熟種子形質が記載されている。国内では E. dentata とコバノショウジョウソウを対応させる資料と、同名の収蔵標本記録が存在する。 |
| 未確認のこと | 三郷株の確定同定、国内の個々の E. dentata 標本の実際の種、両種の混在・分布・混同率、E. davidii の国内初記録年。 |
| 追加調査の要点 | 既存標本の成熟種子を同じ方向・尺度で比較し、元の同定と再同定を記録する。国内図鑑・植物誌の原文と根拠標本も照合する。 |
調査の範囲
起点Googleドキュメント、FNA、Mayfield 2024、Flora of China、YList、国内の公開報告・データセット、GBIFと収蔵機関の公開標本画像、EPPO資料を照合した。標本現物・タイプ標本・原計測画像の再計測は行っていない。本報告の「本調査」はこの資料照合を指す。文献中の同定名、写真による判断、標本の再同定は別の証拠として扱った。



成熟種子による比較

2026年10月3日採取の北戸田株の種子。これ以降掲載写真はすべて北戸田株とその種子です。本文・比較表で扱う三郷株とは別の観察材料であり、三郷株の計測対象10粒を写したものではありません。

FNAは両種の成熟種子の幅・横断面形・種皮彫刻・種阜に差を記載する。Mayfield 2024も種子形態を重視し、根拠標本の背側・側面・腹側像を比較する。[2,3]
横断面形は種子の長軸に垂直な断面の輪郭を指す。三郷株では切断せず、外形と転動時の面・稜から推定した。種皮彫刻は種子表面の隆起・疣状突起・横列などのパターンで、種子全体の外形と区別する。
| 形質 | E. dentata FNA | E. davidii FNA | 三郷株 起点文書 |
| 長さ × 幅 mm | 2.1–2.7 × 1.7–2.1 | 2.4–2.9 × 2.2–2.9 | 2.4–2.7 × 2.2–2.5 平均 2.56 × 2.43 計測種子10粒 |
| 外形と 横断面形 | 卵形。 横断面形は丸い | 卵形〜三角卵形。 横断面形は角張る | 長さ/幅 約1.05。 転動で面・稜が現れ、角張った横断面形を示唆(推定) |
| 種皮彫刻 | 細かい疣状突起が 均一に並ぶ | 低い疣状突起が 不規則、または 不明瞭な横列 | 突起の大きさと配置が 不規則 |
| 種阜 mm | 0.4–0.6 | 0.9–1.1 | 幅 0.7–1.0 平均 0.88 |
FNAの記載は[2]、三郷の報告値と観察は[1]。三郷列の横断面形は外形・転動からの推定で、10粒は母株数・個体数を示さない。種阜の測定軸は本文で留保する。





三郷株の整合性の読み方
長さは両種の範囲が重なる。三郷の報告幅2.2–2.5 mmはFNAの E. davidii の公表範囲2.2–2.9 mmに入り、E. dentata の上限2.1 mmを0.1–0.4 mm上回る。両種の公表幅の上限2.1 mmと下限2.2 mmの間隔は0.1 mmである。[1,2]
ただし、写真計測の誤差は定量化されていない。幅単独での確定同定や E. dentata の排除は行わず、外形と転動から推定した角張った横断面形、および不規則な種皮彫刻と組み合わせて評価する。この組合せは E. davidii に積極的に整合する。[1–3]
三郷の種阜幅0.7–1.0 mmは、FNAの E. davidii の種阜寸法0.9–1.1 mmと0.9–1.0 mmで一部重なる。FNAの種記載は測定軸・方向を明示していない。数値は参考比較にとどめ、同一軸での再計測なしに閾値として扱わない。保存状態と欠損も確認する。[1,2]
観察と計測の限界
一円玉による写真計測では、撮影面・傾き・向き・輪郭の読み取りに伴う誤差を定量化していない。起点文書の幅は、向きをそろえて1.6–2.1 mmから2.2–2.5 mmへ修正された。計測した10粒の母株への帰属は本文から確定できない。[1]
起点文書の「四角に近く見える」は転動観察の記録であり、FNAの「角張る」への整合を示唆する。切断面を観察した結果ではない。強い背側横畝の有無は、各粒の方向別画像で追加確認する。[1–3]
補助形質と分類学的記載の履歴
| 補助形質 | E. dentata | E. davidii |
| 葉と毛 | 葉幅・形は大きく変異。 裏面に柔らかい糸状の長い毛 | 葉は楕円形寄り。 裏面に硬く強く先細る毛 |
| 杯状花序の総苞 | 鐘形 3.8 × 1.8 mm | 円筒形 2.5–3 × 1.3–1.8 mm |
| 腺体数 | 通常2、1のこともある | 1 |
| 蒴果 | 扁球形 2.5–2.8 × 3.5–4 mm 無毛 | 広卵形 2.9–3.3 × 4–4.8 mm 無毛 |
| 共通し得る外観 | 葉は通常対生で、遠位節では時に互生する。杯状花序周辺の苞葉は緑色〜淡色を含む | 葉は通常対生で、遠位節では時に互生する。杯状花序周辺の苞葉は緑色〜淡色を含む |
| 染色体数 | 2n=28 | 2n=56 |
出典はFNA。[2] 記載上の傾向であり、未成熟個体や1形質だけによる確定用の表ではない。
葉形、鋸歯、対生、苞葉の色、腺体1個は両種で重なり得る。葉の毛や総苞形は有用な補助形質だが、三郷株について本報告では再評価していない。蒴果の大きさ・形には差が記載される一方、「davidiiは平滑、dentataは疣状」という二分はFNAにない。glabrousは無毛を意味し、表面が平滑であることと同義ではない。



古い dentata の記載をそのまま比較できない場合

E. subilsiae は本調査で日本産を確認した分類群ではない。比較対象に含めるのは、アルゼンチンでの E. dentata 名の歴史的な適用範囲を踏まえ、古い同名ラベルを直ちに E. davidii の証拠とみなさないためである。[3]
E. davidii は1984年に記載された。Mayfield 2024は、アルゼンチンで歴史的に E. dentata とされてきた材料の一部を E. subilsiae として正式記載し、同国の古い dentata 名が E. subilsiae と E. davidii の双方へ用いられていたと整理した。したがって、古い dentata ラベルを見つけても、直ちに davidii の証拠にはならない。[3]
Mayfield 2024による E. subilsiae の種子は2.7–3.1 × 2.0–2.4 mmで縦長、背側中央より下に明瞭な横畝をもち、種阜は幅0.4–0.5 mmでU字形かつ中央が隆起する。記載はpp.163–164、比較種子像はFig. 2 p.166、検索表はp.168にある。三郷のほぼ等軸の種子とは全体として整合しにくい。[1,3]
Mayfield 2024によれば、Marchessi et al. 2011が E. dentata として扱った標本には、後に E. subilsiae と整理される材料が含まれる。これはMayfieldを通じた間接引用であり、Marchessi 2011の全文は本報告では直接確認していない。古い比較表のdentata欄を、そのまま狭義dentataの説明として転用しない。[3]
起点文書中の出典表現は少し精密化できる。davidiiの「幅広い卵形で長さと幅がほぼ同じ」はMayfieldの検索表p.168、FNAは「卵形〜三角卵形」である。dentataとの面・彫刻の具体的比較はMayfield p.166、種子形態を重視する総論はp.165にある。結論の方向は変わらない。[2,3]
国内の記載と和名の使用













確認できた国内資料の範囲
YListの現行公開項目40863は、コバノショウジョウソウを E. dentata Michx. の標準項目として掲載し、生態情報を「帰」としている。文献欄には初島の九州植物誌2004年版p.126とFlora of China 2008年p.298が挙がる。これで確認できるのは名称対応と文献参照であり、国内の全個体の種子が再点検されたことではない。[5]
群馬の2014年の発見を記す観察ページでは、当初ショウジョウソウモドキが検討され、照会の後にコバノショウジョウソウとされたこと、福島大学と群馬県立自然史博物館へ標本が収められたことが報告される。記載は「灰黒色ででこぼこ」の種子などで、davidiiとの区別に使う幅・横断面形・種阜の詳細は公開本文にはない。公開説明だけでは両種を判定し直せない。[8]
大阪の2023年の報告は、葉の大きさや鋸歯では判定できず、博物館の標本と種子形状を使った経過を示す。これは国内でも種子が同定に使われている実例である。ただし、そこで比較される「両種」は E. heterophylla と E. dentata で、davidiiとdentataの混同を実証した報告ではない。[7]
記載の継承と資料間の違い
YListが参照するFlora of Chinaの dentata は、種子約2 × 1.5–2 mm、疣状、種阜は小さい盾状と記載する。FNAとは寸法や種阜の表現に違いがあり、EPPO 2025も中国の dentata 報告がdavidiiである可能性を指摘する。中国の地域記載を、日本の未検討材料の確定根拠に移すことはできない。[2,4,12]
また、Mayfieldはdentataとdavidiiをまとめてsubilsiaeより大きい腎形種阜と表現するが、FNAのdentata 0.4–0.6 mmとMayfieldのsubilsiaeの幅0.4–0.5 mmは近い。比較表現と計測軸の違いを残し、数値を平均したり、一方の記載を無断で修正したりしない。[2,3]
和名を使う際の当面の整理
| 対象 | 適切な記録のしかた |
| 既存資料の名称 | 「コバノショウジョウソウ/E. dentataとして報告」と元の名称を保持し、再同定済みかを別記する。 |
| 三郷の今回の判断 | 「E. davidii 相当」と記す。従来コバノショウジョウソウと見ていた経緯を、種名の確定とは分ける。 |
| E. davidii の和名 | 本調査では標準和名を確定できなかった。2021年公開YList一覧に項目を確認できないことは、現在も和名がない証明ではない。 |
国内の標本記録
2026年10月5日06:24 JST、GBIF APIで E. dentata の受容名に対応するtaxonKey=3066993、country=JP、limit=300、offset=0の条件を照会し、3件を取得した。いずれも保存標本レコードだった。表はこの条件で公開された記録を示し、日本国内の全標本数や、成熟種子による再同定結果を示すものではない。[10]
| 収蔵先と番号 | 採集日と都府県 | 公開記録で確認した範囲 |
| 大阪市立自然史博物館 OSA 305393 | 2023-01-22 大阪府 | E. dentata 名。GBIF 5060642503。 取得レコードに成熟種子画像・同定者・同定日を確認できない。 |
| 群馬県立自然史博物館 GMNHJ BS0100264 | 2014-11-06 群馬県 | E. dentata 名。GBIF 2243133478。 取得レコードに成熟種子画像・同定者・同定日を確認できない。 |
| 鹿児島大学総合研究博物館 KAG011919 | 1913-07-21 鹿児島県 | E. dentata 名。GBIF 4054309298。 標本画像と植物園のラベルを確認。種子細部は未確認。 |
鹿児島の1913年標本で区別すべきこと
KAG011919の画像では、鹿児島高等農林學校の標本ラベルに E. dentata Michx.、和名「ニシキタイゲキ」、採集地「本校植物園」、日付21.VII.1913を読み取れる。現在の公開データの和名はコバノショウジョウソウである。この相違は名称対応の履歴を示すが、種子形態による再同定が行われたことまでは示さない。少なくとも当時、植物園にその名称で収集・管理された材料が存在したことを示すが、野外個体群の成立や侵入経路は示さない。[10,11]
鹿児島県の2022年の分布図集も、コバノショウジョウソウ E. dentata を栽培植物リストp.468に掲載する。植物園の古い標本と、野外の帰化・定着記録を同一視できない。1913年を日本への侵入年や野生化初記録年とすることはできず、このリスト項目がKAG011919だけに基づくかも未照合である。[9]
2014年という初記録データの範囲
Egawa・Koyama 2023の日本の外来植物データセットでは、dentataのFirstRecordYearは2014、根拠区分はFirst specimen、IntroductionYearはNAである。READMEによれば標本情報の照会は2022年6–8月に行われている。これはその集計の初記録であって、侵入年や現在の分類概念での確定同定年ではない。[6]
大阪の2023年資料には1973年沖縄県産のdentataラベル標本も示される。1913年の栽培標本とは別に、この1973年標本の収蔵番号・採集環境・成熟種子を確認する必要がある。2014年より古いラベルがあるという事実と、その植物が狭義のdentataであることは分けて扱う。[7]
大阪・群馬の観察報告とGBIF標本は地域・時期が対応するが、報告本文の植物と表の収蔵番号の同一性を直接確認したわけではない。全国の収蔵資料がこの3件に限られるわけでもない。
混同の可能性を支える証拠とその限界
海外では標本の再同定例がある
FNAは、旧世界を含むdentata名の害草報告の多くがdavidiiに帰属する可能性を指摘する。EPPO 2025には、オランダで1964年と1984年にdentataとして記録されたNaturalis Leidenの標本が、2025年にLeni Duistermaatによってdavidiiへ再同定されたとある。これは、古い記録を標本に戻って検証できる実例である。[2,12]
ベルギーのAlien Plants of Belgiumは、E. davidiiを含む E. dentata s.l.という広い概念を明示して扱う。広義の分類概念、旧名の継承、個々の誤同定は区別する必要がある。日本の資料にs.l.の指定がないからといって、同じ概念だったと推測して読み替えることはできない。[13]
日本の davidii 記録への国際的な言及
EPPOの2025年リスク評価p.10には、iNaturalistに基づく日本の E. davidii 候補情報への言及がある。ただし、同資料は専門家作業部会がそのデータを確実には検証できなかった旨を併記している。この言及自体は、日本産の確定標本、国内初記録、または国内定着の確認を意味しない。[12]
同資料のiNaturalist参照日は2024年10月29日で、本調査以前に候補情報が存在している。「日本初記録」や「国内最初の確実な記録」を論じるには、先行候補の確実性と証拠の種類を検証する必要がある。今回の資料比較だけでは、その新規性は確定できない。先行候補と三郷株の形態比較は、それぞれ検証する対象である。[1,12]
国内で混同が起こり得る経路
| 経路 | 資料から言えることと未確認点 |
| 葉と外観が似る | 葉形・鋸歯・対生・苞葉色が重なり、未成熟個体や広い説明では分離しにくい。国内各記録が葉だけで同定されたかは未確認。 |
| 種子の見方がそろわない | 両種とも疣状で、単に「でこぼこ」では区別しにくい。方向で見かけの幅が変わり、種阜の軸や欠損も影響する。 |
| 名称が引き継がれる | 和名と学名の対応表・既存ラベルは、同定名を継承する入口になる。現在の受容名へのデータ整理は、実物の再同定とは別である。 |
| 古い分類概念が混ざる | 海外では広義dentataや別群への誤適用がある。日本の図鑑や地域植物誌がどの概念を採ったかは原文と根拠標本で確かめる必要がある。 |
未確認事項と追加調査の優先順位
本調査の範囲では、国内の狭義 E. dentata の確実な分布、E. davidii との混在、誤同定の件数・割合は確定できない。三郷の10粒が個体群全体を代表するか、母株を越えて同じ形質が続くかも未確認である。三郷材料の同定を補強する調査と、国内の各既存記録を再評価する調査を分け、再検討した記録だけを更新する。
| 優先 | 対象と具体的な確認 | 何が明らかになるか |
| 1 | OSA 305393、GMNHJ BS0100264、KAG011919、および大阪資料の1973年沖縄標本。収蔵機関に成熟種子・附属袋・再同定注記の有無を確認し、許可された方法で比較する。 | 特定の国内記録がdentata、davidii、その他の群のどれか。同定不能なら、その理由を残せる。 |
| 2 | 三郷の種子記録を粒ごとに番号化し、背側・腹側・側面、同一平面の尺度、長さ・最大幅・厚さ、種阜の測定軸をそろえる。自然落下種子は採取位置・日付を残し、母株との対応が観察上確認できる場合だけ母株番号を付す。 | 画像計測の再現性と向きの影響。母株への帰属を確認できた材料での株間変異。母株不明は不明として残す。 |
| 3 | 国内の九州植物誌、帰化植物図鑑、地域植物目録の該当頁と根拠標本を照合する。Subils 1984の原記載全文、Mayfield 1997とタイプ・確実な比較標本も検討する。 | 国内記載が両種を区別するか。古いdentataがどの分類概念・材料に基づくか。 |
| 4 | 形態比較でなお判定が割れる場合に、研究機関と追加形質、種皮の拡大観察、染色体・DNAなどを検討する。 | 形態判断の補強と、比較した近縁群の範囲を越える問題の解決。 |
FNAの記載は E. dentata 2n=28、E. davidii 2n=56である。一方、Mayfield 2024が E. subilsiae について引用する報告はn=28であり、nと2nは表記基準が異なるため、値をそのまま横並びにしない。三郷株の染色体数は未測定であり、本報告では識別根拠に用いない。DNA・SEM・染色体観察は必要に応じて形態判断を補う手段で、すべてが確定同定に必須という意味ではない。[2,3]
現地での観察方針
起点文書の「抜かない・切らない・移動しない」という方針を保つ。まず既存の画像・自然落下種子の記録と収蔵標本を調べる。新たな生植物の採集や移植・栽培を前提にせず、同定の確度を上げる手順を組み立てられる。[1]
三郷材料の暫定評価と国内記録の扱い
埼玉県三郷市の当該観察材料の成熟種子は、記録された寸法、外形および転動観察から推定した角張った横断面形、ならびに不規則な種皮彫刻の組合せにおいて、比較した E. dentata、E. davidii、および E. subilsiae の3分類群のうち Euphorbia davidii の記載に最も整合する。三郷株の報告幅2.2–2.5 mmは、FNAにおける E. davidii の公表範囲2.2–2.9 mmに含まれる。E. dentata の幅上限2.1 mmと E. davidii の幅下限2.2 mmの間隔は0.1 mmであり、三郷株の各報告値は E. dentata の公表上限を0.1–0.4 mm上回る。[1–3]
ただし、三郷株の寸法は写真計測にもとづき、その誤差は定量化されていない。したがって、種子幅単独で確定同定したり、E. dentata を排除したりする根拠とはしない。種子幅は、外形と転動から推定した横断面形、および種皮彫刻と組み合わせて評価する。写真計測の誤差、種阜の測定方向、種子の母株への帰属、および補助形質には未確認事項が残るため、本観察材料は「E. davidii 相当」とする暫定評価である。
国内の既存 E. dentata 記録については、根拠標本、成熟種子、同定履歴、および採集状況の再検討が別途必要である。本調査では国内標本を対象とする系統的な再同定は実施しておらず、本観察から既存記録を一括して E. davidii に読み替えることはできない。
参照資料
本文の番号に対応する。初稿のオンライン資料確認日は2026年10月1日。GBIFの分類群名照合と国内記録は2026年10月5日に再取得した。直接読んだ資料と、書誌・引用を通じてのみ確認した資料を区別した。
[1] 起点Googleドキュメント「コバノショウジョウソウ Euphorbia dentata Michx. と誤認していた個体群の再検討 ─ 埼玉県三郷市における Euphorbia davidii Subils 相当個体の成熟種子形態」。
本文を取得して確認。写真に基づく観察と数値は著者の報告値であり、本調査で再計測した値ではない。
[2] Flora of North America Editorial Committee, eds. 2016. Flora of North America, vol. 12. Euphorbia dentata/E. davidiiの記載。
eFloras掲載の両種本文を確認。寸法・毛・総苞・蒴果・種子・染色体数の比較に使用。
[3] Mayfield, M. H. 2024. Euphorbia subilsiae (Euphorbiaceae), a new species from Argentina. Darwiniana, nueva serie 12(1): 162–169. DOI 10.14522/darwiniana.2024.121.1237.
PDF全文確認。記載pp.163–164、種子の総論p.165、Fig. 2と種間比較p.166、分類史pp.166–168、検索表p.168。PDFの正式綴りsubilsiaeを使用。
[4] Ma, J. S. & M. G. Gilbert. 2008. Euphorbia. Flora of China, vol. 11. E. dentataの項目p.298。
eFlorasの種記載本文を確認。YListが参照する地域記載として比較。
[5] 米倉浩司・梶田忠(2003–)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)。コバノショウジョウソウ/Euphorbia dentata Michx.、項目40863。
詳細項目の編集日は2012年5月12日。2021年公開一覧の未収録を、現在の名称の不存在とは解釈しない。
[6] Egawa, C. & A. Koyama. 2023. A dataset on the first records and introduction pathways of alien plants in Japan. Version 1. Zenodo. DOI 10.5281/zenodo.7597598.
AlienPlantsJapan_v1_FirstRecordPathway.xlsxのREADMEとv1_FirstRecordPathwayシートのdentata行を確認。関連論文:NeoBiota 83: 179–196、DOI 10.3897/neobiota.83.101416。
[7] 桝元慶子. 2023.「生物多様性保全のための情報共有 ~大阪市域生き物調査などの成果の活用~」。大阪市生物多様性の主流化推進に向けたシンポジウム、3月5日。
コバノショウジョウソウの検討と標本写真はPDFの20–21枚目。比較対象がheterophyllaとdentataであることを画像でも確認。
参照資料と確認の限界
[8] 群馬県内のコバノショウジョウソウの2014年発見を記す観察ページ。jousyuu2.sakura.ne.jp。
発見・同定照会・2機関への標本収蔵はページの報告内容として扱い、各収蔵番号との同一性は未照合。
[9] 鈴木英治・丸野勝敏・田金秀一郎・寺田竜太・久保紘史郎・平城達哉・大西亘. 2022.「鹿児島県の維管束植物分布図集 ─ 全県版」。鹿児島大学総合研究博物館研究報告17。
栽培植物リストp.468、番号4260と索引を確認。野生分布図としては引用しない。
[10] GBIF APIに公開された国内保存標本の3レコード。2026年10月5日06:24:07 JST取得。taxonKey=3066993、country=JP、limit=300、offset=0。basisOfRecordのフィルターは指定していない。
OSA 305393 / GMNHJ BS0100264 / KAG011919
GET /v1/occurrence/searchの保存応答はcount=3、endOfRecords=true。3件ともbasisOfRecord=PRESERVED_SPECIMENで、scientificNameとacceptedScientificNameは E. dentata Michx.、identifiedByとdateIdentifiedに値を確認できなかった。受容名への整理と、標本現物の再同定は別である。
同日06:24:07 JSTのGET /v1/species/match(学名、strict=true)は、E. dentata を3066993、E. davidii を3069282に対応させ、いずれも受容名とした。同日06:24:08 JSTのGET /v1/occurrence/count(taxonKey=3069282、country=JP)は0件だった。未電子化・未公開資料や別名記録を含む全国不在の証拠ではない。
[11] 鹿児島大学総合研究博物館、KAG011919の公開標本画像。
標本全体とラベルを拡大確認。画像から成熟種子の寸法・横断面形・種皮彫刻を判定していない。
[12] EPPO. 2025. Pest risk analysis for Euphorbia davidii. EPPO Technical Document No. 1096, September 2025.
全文確認。日本と中国に関する留保はp.10、オランダの標本再同定はp.13。iNaturalistの参照日2024年10月29日は参考文献p.35。
[13] Verloove, F. Alien Plants of Belgium. Euphorbia dentataの公開説明。
davidiiを含むdentata s.l.という資料自身の分類概念を確認。日本の記録へ自動的には適用しない。
未取得資料と調査限界
Subils 1984の原記載全文、Marchessi et al. 2011の全文、Mayfield 1997の学位論文、国内図鑑・九州植物誌の該当頁は、この比較で直接確認していない。これらの内容はMayfield 2024やYListの引用から分かる範囲に限定した。本調査では、全国の標本調査、標本現物の再同定、国内各地の種子比較、染色体・DNA・SEM観察は実施していない。


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